作品の映像、映像の作品
アニエスの浜辺
2008年/フランス/監督・脚本:アニエス・ヴァルダ
ヌーヴェル・ヴァーグの女性監督、アニエス・ヴァルダ。81歳になった彼女自身の人生を辿る映像。
子供時代を過ごしたベルギーの浜辺。疎開した南フランスの港町セート。夫である映画監督ジャック・ドゥミと渡ったアメリカ西海岸。それぞれの地での出来事、出会った人達のこと。
ベルギーの浜辺に立てられた無数の鏡に映されたスタッフ、砂浜と海と空、光の乱反射、彼女自身。風で彼女の首に巻かれたスカーフが彼女の顔に覆い被さるのを「本番でもこうなればいいわ」と云う。
彼女自身が語る。当時の映像が繋がれ、モノクロ写真をコラージュしながら、かと思えばいきなり色彩豊かな再現映像にすり替わる。
いくつものインスタレーションが映像となって折り重なっている。独特の感性で、思うままに、自由自在に、プチッと切り取る。ブツッと切ってペッと貼り付けたような荒っぽい繋ぎ目が、とても女性らしく思える。少女のようなおばあちゃん。
カッコええだらけ
SOUL RED 松田優作
2009年/監督:御法川修
昨年没後20年、生誕60年を迎えた松田優作の熱き俳優人生を綴ったドキュメンタリー映画。
当時の映画で関わった監督やプロデューサーなどのスタッフや、憧れて育った世代の俳優などの証言はとても興味深かったけれど、当時共演していた同世代の俳優の証言がなかった。「ブラック・レイン」で共演したアンディ・ガルシアの出演に頑張ったのか。
アンディ・ガルシアは「ゴッドファーザーPART III」のニョッキのラブシーンばかり思い出すが、「ゴッドファーザーPART III」が「ブラック・レイン」の後に制作されているというのも不思議な感じだ。それほど松田優作が逝ったのが昔のことだったということ。
最後に息子の松田龍平と松田翔太も個々に父、松田優作について語るのだが、熱く語る他の証言者たちとの温度差が著しい。あまり会ったことがないのでよくわからない・・・という感じが。居眠りした・・・
それにしてもやっぱカッコいい。
人生の畑道を行く
夫はよく休日の午後にカメラを持って散歩してくると出かけている。今日は私も暇なのでくっついて行ってみた。
丘といおうか山といおうかちょっとした山があってその辺りが一面畑になっている。デコボコした地形に1コ1コがそれほど広くない畑がたくさんあって、軽トラが通れるくらいの道が畑に沿ってぐるぐると入り組んで作られている。散歩コースに丁度良いらしく、ウォーキングに励む高齢夫婦や犬を散歩している同じ犬とおじさんに何回も会ったりした。
こんな所あったんだなー。
道ばたにスッパイ草がたくさん生えている。「スイバ」というんだろうか、赤い筋が入った茎で赤らんだ実がわさわさ付いた草。この茎の筋を剥くと食べられるのだと誰かに聞いて食べまくった小学生時代。夫は食べたことがないというので、思い出を共有するべく筋を剥いてやり、嫌がるのをアハハオホホと無理矢理食べさせたりなど。
こういうのをイチャイチャしているというのではないか・・
畑道は入り組んでおり、やたらと分かれ道に遭遇した。あてもなくぶらぶらしているので自分たちのいる位置さえだいたいわかっていればいいし、畑ばかりがあるばかり、右に行けばあの辺、左に行けばあの辺に行くだろう。どっちに行こうがさして重要なことではない。
そんなどっちでもいい分かれ道で夫はジェントルマンだから聞いてくる。
「どちらに進みたいですか?」
どっちでもいいわい。
夫もどっちでもいいから占い的に妻に決めさそうということだろうが、それもどうでもいいわい。どうでもいいことだが無性に面倒になる。たまらず言い放った。
「あんたが行きたい方に行けばいい。あたしはそれについて行くからさ!」
こういうのをイチャイチャしているというのではないか・・
3食築地は無理だった
実は昨年の11月にも築地に行っている。
日本橋茅場町で行われていた弟の個展を観に行くという名目で東京に行った。せっかく東京に行くのだから弟の陣中見舞いだけに終わらせたくない。日本橋茅場町、東京メトロ茅場町駅から二駅程で築地がある。築地が。
この時は予てからやってみたいと思っていたこと「早朝の築地を見たい」「東京を自転車でうろついてみたい」という事柄を実行するため晴海に宿をとって、車に自転車を積んで行ったのだった。
築地場内は土曜日だし観光客で混雑するらしいということで、深夜1時に長野を出発した。義兄に借りたカーナビのお姉ちゃんのアナウンスに従うままに築地に到着したのが夜明け前の4時半だった。
駐車場はまだガラガラで、日本で一二を争う張りきりようなのではないかと感じ、なんだか気恥ずかしかった。飲食店は4時から開店しているところもあるので早速乗り込んで行ってもよかったのだが、今日1日のためにもちょっと仮眠してから行くことにした。が、築地のこの「美味しいものがたくさんあるよ!」的な空気を目前にして、10分も経たないうちに空腹で仮眠などしていられなくなった。
築地場内「魚がし横丁」
まだ5時前なのに既に行列のできている店も何軒かあった。張りきっている人がたくさんいた。やはり外国人が多い。飲んだ帰りのサラリーマン風の男女が千鳥足で回転寿司屋に入っていったり。
業者がターレットなる移動と運搬に使う乗り物に乗って、もの凄いスピードで走り回っており、かなり怖い。実際ここはこの人達の仕事場であるのでターレットが大優先。狭い路地も巧みなハンドルさばきで観光客を威勢良く蹴散らしながらくわえたばこに不機嫌そうな兄ちゃん達がキラキラしていた。ここではキョロキョロとうろつく観光客はまるで迷い犬だ。
実際怖くて競り市などやっているゾーンには入って行けなかった。外国人やずぶといおばちゃんなどはお構いなしにズンズン入って行けるのだろうな。近頃競りの見物が中止になったらしい。
既に大行列になっている店に並ぶのは御免なので、1~2人しか並んでいないすぐに入れそうな海鮮丼の店に並んだ。本当は天丼にするか海鮮丼にするかでちょっともめている。
こんな普段寝ることはあっても起きることはないような時間に、海鮮丼をガッツリ食べようとしていることがなんだかワクワクした。
何を食べたかよくおぼえていない。ウニをトッピングしたような気がする。狭いカウンター席しかない店内で陽気な外国人客がデカい声で「オイシイ!オイシイ!」と連呼していた。
その後まだまだ築地に居続けた。10時に弟と落ち合って今度は築地場外の店で寿司を食べた。食べ過ぎだ。もう食べれないよ。品がない。
その後弟の個展を見に行き、晴海にとった宿にチェックインして自転車に乗ってその界隈をうろついてみた。
本当は夕飯も築地で今度は天丼などと思っていたのだけれど、さすがにもう築地で天丼って感じでなく築地はやめた。でも入ったところが地鶏の鉄板焼きというそのチョイスもよくわからない。
翌日は晴海から銀座までを自転車で行ってみた。晴海通りを一直線、高低差がほとんどなくスイスイ行って爽快だった。人の多さに圧倒され、お茶して帰ってきた。拠点としていた晴海は閑静なところで落ち着く。
それから荷物をまとめて晴海を出発し、北区にある妹の家に寄ってから長野に帰った。
今になって天丼を食べなかったのが心残りだ。今度は天丼を食べに行かなくては。
晴海→築地→晴海→GEISAI#14見物
東京ビッグサイトで行われるGEISAI#14の見物に行ってきた。
時間はないけれどもせっかく東京に行くのだからGEISAI見物だけに終わらせたくない。
東京ビッグサイトから晴海大橋を渡りもうちょっと行くと築地がある。築地が。
車に自転車を積んで先ず晴海埠頭あたりを目指して長野を出発した。義兄から借りたカーナビのお姉ちゃんのアナウンスに翻弄されながらもなんとか晴海に到着し、晴海からは自転車に乗り換えて、腹が減った腹が減った言いながら勝どき橋を渡って築地に直行した。
日曜日だから場内は休みだけれど、場外では観光客に向けて営業している飲食店はけっこうある。リサーチしておいた店はすぐ見つかった。
夫も私もどんだけ腹が減っていたのか、メニューを全部見もせずに最初に目に止まった美味しそうな写真のやつに決めてしまい即注文した。
待っている間に落ち着きを取り戻し、改めてメニューをじっくり見直していた夫は、今度は後悔と更なる欲の塊になっており、もう一品頼むだの帰りにもう一回寄って食べて行くなどと再び冷静さを失っていた。結局我慢がならなかったらしく、もう一品丼を追加していた・・・
私の頼んだ海鮮ひつまぶしも美味しかったけれども、夫が最初に頼んでおったマグロのあぶり丼はかなり旨かった。丼は追加したので帰りには寄らなかった。
気が済んだところで築地を後にし、晴海の拠点にいっぺん戻り小休憩した後、今度は晴海大橋を渡りGEISAIが行われている東京ビッグサイトへと自転車をこいだ。
晴海から築地までは一貫して平坦一本道、高低差がなく楽々ちんだったので、もちろん逆方向も同じであろうと思い込んでいたのだけれど、晴海大橋が予想外に大きく盛り上がっており、自転車こぎにとっては試練の大橋だった。橋の頂点に達するまでに何度も自転車から降りて押して渡ろうとくじけそうになったが、この困難に立ち向かっている様を自分の人生に重ね合わせたりなどしながら止まらず頑張った。
ビッグサイトの敷地内には秋葉原にいそうな紙袋を下げた男たちがたむろっているというか、物凄い群衆が皆座り込んで交流しており、GEISAIの会場を間違えたのか、それともGEISAIの客層はこういう感じなのかとか大きな不安に包まれたが、よくよく中に入ってみるといくつもの会場があるということが判明し、GEISAI会場は紙袋の群衆の先にちゃんとあった。紙袋は紙袋系の萌ゆるイベントが開催されていたらしかった。
GEISAIは間口が広いイベントだけあっていろんな人やいろんな作品がひしめいており、見せ方も重要な要素となっているようだった。勝山氏も巨大な絵画が多い中、試行錯誤で臨機応変に展示方法を変えたりなどして作品を見せていました。
午後になってから行ったので審査員がうろつく光景を見れなかったのがちょっと残念だったけれども、なかなか目に新鮮なイベントでありました。
「ダイゴヨウ」は焼酎じゃないのか
正月に実家に行ったときのこと。
甥っ子がお年玉でじいちゃんに買ってもらったという「ダイゴヨウ」なるものを見せてくれた。
どうやらスーパー戦隊シリーズに出てくる物らしい。
甥っ子は隊員さながらの小芝居を交えながら使い方などを熱く説明してくれた。要するにコンパクトになるロボなのだね。
しかしあれだね、このコンパクトになった状態は、似たような名前のリーズナブルな焼酎のボトルのようだね。或いはいらないお土産提灯のようでもある。腹部には「侍」って力強く入っている。
甥っ子は自信たっぷりにこのロボを紹介している。果たして全てのシンケンジャーを見ているちびっ子に受け入れられているのだろうか、このロボは。
そんなことを思っていたら、モヤリモヤリと小学生だった頃の記憶が蘇ってきた。
全くかっこいいと思えない戦隊がいたよ。
確かカブト虫的なイメージで、茶色くて鼻の下にダリのような髭のあるおっさんが混じっていたんだよ。
早速「戦隊物」で検索してみたら「スーパー戦隊シリーズ」が出てきたけれど、それらしい戦隊は存在していないようだった。おかしい・・・絶対茶色いのいたんだけどな。
そこで「戦隊 茶色 おじさん 茶色コスチューム 茶色スーツ」などしつこくしつこく検索したらようやく見つけ出した。『忍者キャプター』
そうですそうですこれです。
ヘルメットをパカッと開けると生身の人間の顔が出てきている。生身感がすごい。変身してないのかなあ。ただ着替えただけの設定なのかなあ。隊員は幅広い年齢層で分け隔てない感じだ。イケメンはいるのかなあ。いろいろ心配になる。
「ダイゴヨウ」或いは『シンケンジャー』がここまできているかどうかは、実際に番組を見てみないとわからないので見てみた。
物語は終盤を迎えようとしていた。「ダイゴヨウ」は巨大ロボではなく、マスコットキャラ的要素を含む御用提灯のように構える武器だということがわかった。戦隊は若さでピチピチしていて、ちゃんと強そうに変身しておりシュッとしている。大人心に内容は突っ込みどころが盛りだくさんだが、決して『忍者キャプター』と一緒に語ってはいけないと思った。
でもやっぱり「ダイゴヨウ」は焼酎なんじゃないのか。
馬はいいべ
雪に願うこと
2006年/監督:根岸吉太郎
馬がいい。この話は、“ばんえい競馬”の厩舎を手伝うことになった心折れた青年が再生するまでのドラマだが、この“ばんえい競馬”の馬“輓馬(ばんば)”と呼ばれる馬が特にいい。というか馬が主役といってもよいかもしれない。
このばんえい競走馬というのは農耕馬として利用される種の馬で、足がガッチリしていてとても筋肉質な馬であり、競馬では騎手と500kg以上もの重量物を積んだ鉄製のソリを引いて、二カ所の障害(坂というか小山)を含んだ200mのコースを競う。
速けりゃいいってもんではないようで、とにかく重い物を引きずっているので、持久力も必要となるようだ。途中で力尽きて立ち止まってしまう馬もいる。馬のやる気と闘争心にもかかっている。
障害の小山を乗り越えるのが難関で、小山の頂点の寸前で足を折り曲げて膝をついて頑張っている子がいたりするのが痛々しく、もう見ちゃいられないと思ってしまう。
1年を通して成績がふるわなければ馬肉にされてしまうという。それを最初に聞いた勢谷友介扮する青年は「そんなの馬はわかんないッスよね」と言った。でも話が進むうちに馬はわかってるってことがわかってくる。青年が世話をすることになる馬ウンリュウは馬刺寸前の崖っぷちだった。
いろいろ複雑な気分になるけれど、とにかくウンリュウがかわいらしく撮れている。目がかわいい。たてがみがかわいい。普段はおろしていてナチュラルヘアスタイルで、レースの時はキッチリ編み込みスタイルになっている。
中盤で伊勢谷友介に対して好意を示す仕草をするシーンがある。なんか羨ましかった。あんな目をした馬に好かれたらさぞ嬉しかろう、かわいかろう。
真冬の早朝の凍るような青い空気の中、馬たちの重量を引く訓練をしている。馬の大きな鼻息と全身から発散する白い湯気が濛々と立ちこめて、力強く本当に美しい。