HOLY’S USAKUMA BOOK 制作の備忘録
編み物作家である HOLY’S の保里尚美さんが、2021年に行った、二度目の「働くセーター写真展」のために作られた、働くセーターを着たうさぎとクマ。
友人や知人、身近な人たちをイメージして、彼らに似合うセーターを編むように制作されたこのうさぎとクマは、たしか総勢40体、いや40人に及んだと聞いたような気がする。
それは昨年の1月のこと。
巡回に回った40人の中からの選ばれし20人(本当は残留軍団20人)が、オンラインストアで販売したいという依頼で我が家に送られてきた。
思っていたより大きく感じられたうさぎとクマは、かたちよく丁寧に作られ、ラグラン袖のセーターやパンツを本当に着ているようで、「人間みたいだけど人間でないうさぎとクマ」という、キャラのしっかりした保里さんの「うさぎとクマ」であった。
ネット販売のために一個一個を順番に撮影して、顔のどアップや体の各所をファインダーで覗いていると、皆微妙に違い、個性があるのがわかってくる。
顔の刺繍の位置や口の角度によって表情が出ていたり、足と胴の長さの比率とか、詰め物の詰め具合でも表情が全然違う。
ファインダー越しに思いっきりジロジロ見ながら撮影したり、体のサイズを計ったりなどでコネコネと触っているうちに愛着が増してきたものであったが、そんな頃に業務は終わり、軍団は広島の保里さんの元に戻って行った。
※ネット販売はまだ行っておりません(2023.1.20現在)
その「無事戻ってきたよ〜」の連絡で、保里さんから、ネット販売用に撮影したそれぞれの写真で、小さな冊子を作りたいと思ったのだと持ちかけられたのであった。
当初は、結構な軽いノリで簡単に作ろうという話だったので、私もデザインだけでも参加させてもらえるなら嬉しいっス〜、ぐらいに受け止めていたのだが、保里さんの、作ると決めてからの発動力が半端なく、次の日にはその冊子に「編み図」もつけるという話がまとまっていて、その「編み図」を制作してくださる編集者 K氏と保里さんの「作り方チーム」が発足され、私は、冊子のディレクションから制作、印刷手配、WEB業務までの「ひとり代理店チーム」を任命された。
作り方チームは、K氏による「編み図」制作が先行して行われ、それから作り方ページの写真と動画を保里さんがコツコツと自撮りし、解説をつけて、K氏からアドバイスをいただきながら、作り方のプロセスを練り上げていくという作業が淡々と行われていたが、時折 LINE によって工程画像や校正画像が、どんどこどんどこ続け様に一枚ずつ送られてくるのが恐怖であった。
しかしながら、作り方を掲載する限り、その設計図(編み図)と解説の通りに作ったら、ちゃんと編み上げることができるようにするという作業が、どんなに緻密に考えられているか、どんなに骨の折れる作業であるかを、お二人のやりとりを間接的にではあるけれども感じ取りながら、知ることができた。
私の方はというと、ネット販売用に撮影した、壁バックにポートレイトのように撮った一律の写真と、保里さんが巡回展の時などに撮ったスナップ写真などの有り合わせの写真でいい、というのがどうしても引っかかって、改めてこの本のためにうさぎとクマの写真を撮らせてもらえないかと提案させていただき、あのうさぎとクマをいい感じで撮影するという、楽しい業務を獲得した!
そして彼らはまた我が家に戻って来た。
全おまかせでやらせていただいた撮影は、構想からセット作りやなんやら本当に楽しく、必要カットを全て撮り終えたるや、すぐさまダミーのテキストを入れて、あーだこーだレイアウトしてーの、面付けして製本してーの、叩き台のダミー本を作り上げてーので保里さんに発送し、電話で話しつつ「かわいいねぇ〜」と二人でニヤニヤしながら、互いに士気高揚し合ったのであった。
その後の本の構成と、テキストを練り上げてゆく作業もまたおもしろく、当初は軽いノリで適当に作ろうとしていた本が、この本を見たら確実に、うさクマを作っていただけるようにしようという保里さんの熱意と、編み物の本作りに日々携わるK氏の、プロの目を透してご意見をいただきながら、自由にアレンジして自分だけの“うさクマ”を作っていただけるような、充実した内容となったのでした。
私は、これが〜俺の最後の仕事〜♪ くらいの意気込みでこの本作りに参加させてもらっていました。紆余曲折ありましたが、無事この本を完成させることができて感無量でございます。制作中はもちろん、これからの励みにもなったわい。
ありがとうございました、保里ちゃん。
最終的に24人のうさクマちゃん軍団を、長期に渡って我が家で預かっていたが、そろそろお別れになります。さようなら。ありがとう。
ちなみに私は、この小さい子たちが特に好き。
他の大きい人より背丈が小さいというのもあるのだが、それだけではないような気がする。なんで小さい子っぽく見えるのか。
足の短さか。詰め物がパンパンに詰まっていなくて、ちょっとひょろっとしているせいか。
各うさぎには、名前や職業が表記されたタグがついているが、この子たちにも職業が書かれているので、保里さん的には、大人の小さい人というテイなんだな。
写真の一番右側の、調子乗った風の黄色い子。
本のモデルになれなかったうさ。
黄色いカーディガンに、微妙に色が違う黄色のパンツを合わせているが、ほぼ同色なので、上下黄色のオールインワンに見えるコーディネート。
靴はうさ肌と同系色の微妙に違うブラウンを合わせて、裸足か!と思わせる。
この子のタグには「Sachie 音楽の先生」と書かれているので、ちゃんとしたモデルがいらっしゃったか!しかも女性の方。
すみません、Sachieさん。
しかし私は、この黄色い子のことを密かにブルース・リーと呼んでいた。
事あるごとに、このうさクマたちを、箱から引っ張り出しては仕舞うという行為を繰り返していたものだが、この黄色い子が出てくる度に「ブルース・リー」と心の中で呟いては気にかけ、親しんでいた。
もしも私に編み物ができたなら。
ブルース・リーうさにする場合、イエローの全身スーツに、両脇に太めのブラックのラインを入れたいが、刺繍だと大変そうなので、ブラックの細いサテンリボン、或いは綿テープを見つけてきて縫い付ける。スーツの背中にはジッパーのラインを、スーツより少し濃い色の糸でアウトラインステッチで刺繍する。靴はスーツより少し薄いイエローに、ブラックの糸でストレートステッチしてスニーカーに見立てる。
最後に、どうにかしてヌンチャクを作って持たせる。
私の想像力なんぞは乏しいもんだが、私にもうさクマを自由に作ってみたいという想像が膨らんでくる。
『HOLY’S USAKUMA BOOK』の中には、保里さんが、ニットデザイナー SWISH! さんにうさクマをデザインしていただき、作ったおしゃれうさクマを紹介するページがあるのだが、形状の違うモヘアを組み合わせたり、モケモケの変わり糸などを部分的に使うなど、楽しんで作っている感じ、編み物の楽しさというのがより伝わってくるページになっている。
そういえば、昔々にデザインの素材として作った人形の、髪の毛に使用しようと購入した変な毛糸があったのではないかと引っ張り出してきてみた。
もしも編み物ができたなら。
こんな毛糸で全身一色で編んだら、イエティみたいになるんだろうか。
横着か。
西田敏行の歌声が、頭から離れなくなってしまう。
そんな小冊子です。
いつか、なにか作ってみたい。
HOLY’S USAKUMA BOOK
発行: HOLY’S
価格: 2,200円(税込)
A5サイズ/30ページ/中綴じ冊子+ B4編み図2枚(うさぎ、クマ)
ご購入いただけるお店はこちらのページに掲載しています。
https://holys-knitting.com/shoplist
HOLY’S USAKUMA BOOK を制作する
シェットランドヤーンを使って編み物制作をしている、HOLY’Sの保里尚美さんが自費出版された『HOLY’S USAKUMA BOOK(HOLY’S うさクマ)』の制作のお手伝いをしました。
保里さんが作った、働くセーターを着た15人のうさぎとクマ(通称うさクマ)を、アレンジポイントや、着用したエプロンやバッグの作り方を交えて紹介しつつ、表紙の凛々しく並ぶ基本のうさぎとクマの設計図である「編み図」が付録でつき、制作工程のポイントを写真とともに解説した編み方、動画解説QRコードも掲載しています。
キャッチコピーは
●HOLY’Sうさクマの作品集
●基本のうさぎの HOW TO MAKE(編み方)
●自由にアレンジして自分だけの“うさクマ”を作ろう!
この「自由にアレンジして」というのが、前作の『働くセーター』の、それぞれの用途に合わせて自由にカスタマイズでき、着方もカスタマイズできるよ〜というテーマを引き継いでいるかもしれない。
「人はそれぞれ違い、その人に合ったやり方を選べばいい」
そんな感じか。
編みぐるみだからといって子供向けに寄り過ぎず、とてもシンプルな形のうさぎとクマは、頭から編み進み、糸の色を変えてセーターを着て、ズボンを履き、靴を履き、飾りを付けたりして遊びながら、最後に顔を刺繍する。
部分的に変わった糸を使ったっていい。
好きに小物を作って装着してもいい。
足が長くても、短くてもいい。
寸法が作り方通りに仕上がらなくてもいい。
この本は、昨年末に発売されましたが、編み物がお上手な方々は、この本を手に入れたその日のうちに完成させてインスタにアップされるなど、既にたくさんの、各々のうさクマちゃんができています。それぞれに個性があって、顔もみな違い、さっそく独自のアレンジを効かせていらっしゃる。
自然とどんなのを作ろうかと、構想してしまう本なのではないかと思います。
HOLY’S USAKUMA BOOK
発行: HOLY’S
価格: 2,200円(税込)
A5サイズ/30ページ/中綴じ冊子+ B4編み図2枚(うさぎ、クマ)
ご購入いただけるお店はこちらのページに掲載しています。
https://holys-knitting.com/shoplist
ノーノ分室の冬のDMの仕事
ノーノ分室の夏のDMの仕事
ノーノ分室の冬のDMの仕事
HOLY’S のルームシューズが届く
シェットランドヤーンを使って編み物制作をしている、HOLY’Sの保里尚美さんより、ルームシューズが届いた。お直しをお願いした1号と、新しくオーダーしたおニュー2号。
7年ほど愛用させてもらっていた1号。
昨シーズン、中敷き布と靴裏のスウェードが遂に破けてきてしまったので、次のシーズンまでになんとか張り替えていただくようお願いしていた。
それと、この1号をお直しに送り出すに当たり、冬にはなくてはならんモノとなってしまったこのルームシューズ、こうやって何年も使っているとどうしたって傷んできてしまう。
いつかは絶えてしまうのだ。
保里さんだって益々忙しくなって、やたらに作ってくだされと注文したり、お直しをお願いできなくなってしまうかもれないではないか。
そんな感じで一抹の不安がよぎり、だったらもう一足作ってもらって、二足でタッグを組ませて頑張ってもらおうと。
洗濯する時も乾くまで寒い思いしなくていいしなーとか。
それで、全く同じデザインのモノを新しく作ってもらった。
新しい方は、少しフィット感を増していただくようオーダーさせていただいた。
そして冬に入る前の11月の終わりに、仕上がって参りました。
修繕依頼の1号は、中敷きも靴裏のスウェードも真新しく、とてもきれいに張り替えてくれていて、小包を開封した時には、新品が二足入っている!と一瞬パニックになったぐらい美しい仕上がりだった。
もともと7年愛用していたわけだけれども、破けてきたのは中敷きの布と裏に張ったスウェードで、ニットの部分は糸が切れることもほつれることもなく、毛玉もほどんとできないし本当に丈夫できれいにできていて、それはそれはきれいなもんだった。
経年で毛糸のけばけばが取れ、なめしたような柔らかい肌触り。
おニューの2号は、キツめに編むことによりギュッと引き締まり、みっちりフィット感増し増しの仕上がりを実現してくれていた。
HOLY’Sのルームシューズの履き口はどうも何者かの口に見えてしまうのだが。
ホエ〜っと余裕のこなれた感を醸し出す1号と、キュッと口角の上がった若々しい2号。
二足それぞれの履き心地を楽しみつつ、また大切に使って行こうと思うのです。
小包には、昨年保里さんが出版された「働くセーター」から派生して、京都でつくられたらしき冊子「a sweater.」が同封されていた。
保里さんの働くセーターを着た、京都の働く人々と手。
保里さんの働く「10の質問」と、読み応えのあるインタビュー記事。
照れくさそうに、恥ずかしそうにエヘヘと笑っている保里さんが写っている。
少し遠回りもしたけれど、編み物の世界に着地して、モノづくりと共に人と人との繋がりを大事に育んできた感じが伝わってきて、なんだか感慨深いものがありました。
「働くセーター」は編み方の本で、保里さんの人物像が垣間見られるような記事があまりなかったので、よい本ができましたね〜と思うのでした。
Amazon 「働くセーター」HOLY’S 保里尚美著(文化出版局)
HOLY’S https://holys-knitting.com/
ノーノ分室の夏のDMの仕事
セレクトショップノーノ分室の夏のDMを制作しました。
ノーノ分室 https://na-na-web.com/
墨汁やインクの滲みが好きです。
滲みを作るぞと意図的に作るわけではあるけれども、墨汁やインクは、紙の繊維や含んだ水分に乗っかって、成り行きに任せて気ままに進む。
滲みを作るぞという意図と、成り行きの自然現象が相まって、素晴らしくちょうどいいのができたり、意図が勝ってダサくなったり、ダサくていいのができたり。
自然にできた形状は、美しく、ただただ力があると思うのです。