馬はいいべ
雪に願うこと
2006年/監督:根岸吉太郎
馬がいい。この話は、“ばんえい競馬”の厩舎を手伝うことになった心折れた青年が再生するまでのドラマだが、この“ばんえい競馬”の馬“輓馬(ばんば)”と呼ばれる馬が特にいい。というか馬が主役といってもよいかもしれない。
このばんえい競走馬というのは農耕馬として利用される種の馬で、足がガッチリしていてとても筋肉質な馬であり、競馬では騎手と500kg以上もの重量物を積んだ鉄製のソリを引いて、二カ所の障害(坂というか小山)を含んだ200mのコースを競う。
速けりゃいいってもんではないようで、とにかく重い物を引きずっているので、持久力も必要となるようだ。途中で力尽きて立ち止まってしまう馬もいる。馬のやる気と闘争心にもかかっている。
障害の小山を乗り越えるのが難関で、小山の頂点の寸前で足を折り曲げて膝をついて頑張っている子がいたりするのが痛々しく、もう見ちゃいられないと思ってしまう。
1年を通して成績がふるわなければ馬肉にされてしまうという。それを最初に聞いた勢谷友介扮する青年は「そんなの馬はわかんないッスよね」と言った。でも話が進むうちに馬はわかってるってことがわかってくる。青年が世話をすることになる馬ウンリュウは馬刺寸前の崖っぷちだった。
いろいろ複雑な気分になるけれど、とにかくウンリュウがかわいらしく撮れている。目がかわいい。たてがみがかわいい。普段はおろしていてナチュラルヘアスタイルで、レースの時はキッチリ編み込みスタイルになっている。
中盤で伊勢谷友介に対して好意を示す仕草をするシーンがある。なんか羨ましかった。あんな目をした馬に好かれたらさぞ嬉しかろう、かわいかろう。
真冬の早朝の凍るような青い空気の中、馬たちの重量を引く訓練をしている。馬の大きな鼻息と全身から発散する白い湯気が濛々と立ちこめて、力強く本当に美しい。