野尻湖で泳ぐということ(完結その2)
8月の終わり、予てから憧れであった野尻湖で泳ぐべく、いざあの岸辺に向かった。午後2時過ぎとなると、既に遊んでいる人々がおり、カヤックで岸に着けて遊泳するツアーっぽい家族と、昨年もお見かけした友人の野尻湖フレンドのシェパード連れのビキニのご婦人ら、総勢8人くらい。
既に水は濁っとるなーとややひるんだが、この勢いに乗ってやらねばいつやるのだと心を強く持って、ジタンと共に水に入っていった。
濁っとるー。
でもついに入ってやったわい。
もうどうでもいいわい。
人間なにか吹っ切れると何もかもどうでもよくなる。
岸から5メートルも行くともう足が着かないからけっこう恐い。なんにも見えないし・・・
前に朝一で来たときは、けっこう透き通っていて小魚が泳いでいるのとか見えたりしたのだけれど、今日は既に犬やら子供達らがわさわさ遊んでいるので水底の土が巻き上がってもうもうとしている。子供らはツアーの一環なのか桟橋の先の物見塔から一人ずつ次々と飛び込み、コンダクターのようなおじさんが写真を撮っている。
それを見ていた友人と夫が、口を揃えてあれをやれあれをやれと盛り立てるので、いい大人だけど、恐いけど、もうどうでもいいわい、やってやるわいと物見の塔へ果敢に登っていった。
もうどうでもいい気分であったがやはりこの危険行為、ここは冷静に歳を考え、子供達の飛んでいた半分の高さの位置から飛び込んでやったわい。
飛び込んだ瞬間、危機感からなのかなんだかわからないが、目がしっかと見開かれた。
そして土がもうもうと立ちこめる水中映像が見えた。
もう二度とやるまい。
ジタンはシェパードのたしかソフィーといったな、彼女と共に喜々としてビニールボールを追いかけている。
よくよく見ると、ボールではなく黄色いお風呂玩具のアヒルちゃんが引きちぎれたやつだった。
シュールだ・・・
友人がアヒルちゃんを持ってジタンと桟橋の先まで走って行き、アヒルちゃんを桟橋から湖に投げ込む→ジタンがアヒルちゃんを捕りに湖に飛び込む→アヒルちゃんを捕ると岸に戻ってくる、というシステムで延々とやっている。
あるとき、ジタンがアヒルちゃんをくわえて単独で桟橋に走って行った。桟橋の下には先程の子供達がユラユラと泳いでいる。
ジタンはあろうことかその子供達の上から「さあ拾いな」と言わんばかりにアヒルちゃんを落とし、子供達がアヒルちゃんを拾って投げ返すという新システムを作った!
何か恐ろしいものを見てしまったような気がする・・・
気高い娘ジタン。
遂に野尻湖で泳いだけれど、どうも北欧のバカンスではなかった。
来年は実家のクーちゃんと朝一で来てやるわい。