野尻湖で泳ぐということ(完結その1)
8月の終わり、今年二人乗りのカヤックを手に入れた友人から、野尻湖でカヤックを体験してみないかと誘われた。
野尻湖ー!!
野尻湖で泳ぐことが、ここ何年かの私の憧れ。
今年は個展に没頭している間に夏は過ぎ去ろうとしていたので、半ば諦めつつも、あと少し残る夏に賭けてチャンスを狙っていた。
そこへゴムボートに乗った友人とジタン(犬)が微笑みをたたえてやってきたのであります。
二つ返事で「やる~!」と返事したものの、よく考えたらやるのはカヤックであって泳ぎではない。
いやいやついでに泳ぐかもしれないし、カヤックが万が一転覆した場合など必然的についでに泳げるかもしれない。まあいいまあいい。
よくわからない希望を持ちつつ、夫と二人で水着着用で、友人とジタンとカヤックが待ち受ける野尻湖に向かった。
友人の所有するカヤックは空気を入れるタイプの二人乗りのカヤック。甲斐甲斐しく全部準備してくれて、友人はジタンと岸辺で遊んでいるから、二人で行ってこいとパドルを渡され送り出された。どっかの岸につけて泳いできてもいいとも言われた。
そんな優雅な感じもできるのか!
最初二人で漕いでみたが息が全く合わず、行きたい方向に進まないので、私は漕がずに写真係となり、追い風に乗ってカヤックはスイスイ進み、夫のテンションも上がり気味で「これ買う~!」などと口走った。
岸からどんどん離れて友人も見えなくなり、ボートで釣りをしている人とか水上スキーに興じる人々などで穏やかに賑わっている。大自然に囲まれて、水上を風切って進む。素敵な遊び。
そういえば・・・
どっかの岸につけて泳いできてもいいと言っていた。
しかしながら、野尻湖の岸辺はそれぞれ私有地になっているはずで、やたらめったらどこでも泳げるわけではないはず。いつも犬を遊ばせるみんなの岸辺に行けばいいのではないのかと思い、次の岸辺、次の岸辺と渡ってみたが、野尻湖は想像以上に大きい。んなものが1時間やそこいらでちょいちょいーっと漕いで辿りつけるはずがないわけで・・・
出発してから30分、後ろを振り向くと漕ぎ出した桟橋ももう全く見えない地点まで来ており、ここから帰り着くまでに確実に30分はかかるのだということを思うと無表情になった。
一人で漕いできて既に疲労困憊状態だった夫はよっぽどうんざりしたであろう。
泳ぐ岸辺もわからないし、恐いからもう帰ろう帰ろうという空気に一気に変わり方向転換して引き返しにかかった。
今度はアタシが一人で漕いであげようと、いざ漕ぎ出したものだが、向かい風となった帰り道、一向に進まん・・・
あの岸辺にいつ帰り着けるのか・・・
恐ろしさのあまり二人がかりで本気漕ぎにかかった。自由に漕いでいるとパドルが一向に揃わないでバタバタしているだけなので、かけ声運動を試みた。
当初はボート部の女子高生のイメージで試みたのであるが、細かいディティールがよくわからなく、そのうちに餅つきの夫婦風となり、更に「おやじの海」風に進化していった。
ワッセワッセと漕いでいると、パドルの動きが揃ってきて向かい風にもかかわらず、グイグイと進み、何故だかたまに出てくる体育会系魂が放出して、全く優雅な湖の遊びとは思えぬ体でガシガシと帰り着いたでのあった。
一息ついて・・・
今度は友人とジタンと私でカヤックに乗り込んで、ちょっとだけまわってくるということになった。
ジタンは船首に立って最初は女がてら勇ましさを見せたが、すぐに飽きてその辺に浮いている浮き玉が気になってしょうがない。
今にも飛びかからんとばかりに身を乗り出したり、浮き玉を追ってカヤックの中を右往左往している。
人間の上を踏みつけて・・・
痛い・・・
カヤック遊びはたぶんあのように体育会系の本気漕ぎでやるものではなく、大自然を愛でながら、ゆったりと余裕かまして楽しむものなんであろう。
そんな大人にもなってみたいけれど、必死の形相の本気漕ぎもなかなかに楽しかった。
カヤックを乾かしている間に岸辺のレストランでランチ。
ジタンが遊び足りないということで、いつもの岸辺で泳いで帰ることになった。
いざ!憧れの北欧のバカンス風湖遊泳。