読者諸君の御想像に任せるとして
小学生の頃読んだあのポプラ社のあの挿し絵入りのシリーズで読みたかったのだが、どうも現在では私が好んで読んでいたあたりははずされているらしい。しかも当然あのハードカバーの本ではない。大人の文庫本売場に移動してみつけた、『江戸川乱歩全集 第9巻 黒蜥蜴』(光文社文庫)。『黒蜥蜴』に加えて『人間豹』も収録されている。
ある意味エロかった。エロい描写が詳細に記述されているわけではないので、エロ小説だと思って読んだら大間違いなのであるが、いちいち「小学生だったら‥‥」と入れ替わって妄想してみたりしてとても面白い。小学生だった頃と違うところは、黒蜥蜴である女賊を美輪明宏に置き換えて読んでいるところか。しかし美輪明宏と考えて読んでいると、ときおり女賊が裸になるシーンがあり、そういうシーンが来ると頭が対応できずにおかしくなる。
‥‥とにかく読み進む。拉致した美しい令嬢を水槽の中で溺れさせようと企み、その様をこと細かに想像して喜々とする女賊。まるでサド侯の小説だな。女賊と明智小五郎の仲が変な感じになるところも小学生には刺激的だった。
『人間豹』も凄かった。児童図書としてシリーズに入れるにあたって、更にソフトに書き換えられていたかもわからないが、『人間豹』は実のところ人獣相姦の話である。数カ所、書かれていないところで確実に陰惨で淫猥なことがおこったな、と妄想に走る行間が用意されていたりする。大人は大人なりに、子供は子供なりに精一杯の想像力を働かせた。
ところでこの人間豹である男は、興奮したり慌てたりすると四つん這いで歩き出す癖があるのだが、どうもその状況を想像するとひょうきんなものになってしまいそれが困りどころであった。
さて、大人になって読んでみてもなかなかエロくて恐くて面白かった『黒蜥蜴』と『人間豹』。あとがきで、私と同じように、小学生の頃は怪人二十面相以外系ばかり読んでいたという評論家の方が、今、少年探偵ものを読むと以外と面白いと『青銅の魔人』を絶賛しておられた。とてもそそられている。