2006.05.30
松川の風呂(1993年作)
以前、ポップアートというモノに非常に興味を示してした時期があり、何を血迷ったかシルクスクリーンでもって自分でも何かやってみたいという猛烈な衝動に駆り立てられ、印刷に必要な感光機を自作までしたことがある。その最初の作品がこれなのであるが、鼻息荒く道具を揃えた割に、やることは小さい。
『松川の風呂』のび太‥‥全く意味がわからないだろう。しかしこの作品にはその当時の私のパッションが凝縮されている。
当時働いていた職場で人事異動があり、私は松川村という村に住むことになった。その時自分でアパートを探すと申し出たところ、異動先の職場側から「アパート探しなんてそんな大変な作業はさせられるものか、こっちでちゃんとしたところを用意しておくから心配しないでいい」という温かいお言葉。いざ家財道具をトラックに一切合切積み込んで出向いたところ、家賃 破格の2,500円という田園に囲まれたいわゆる村営住宅のようなところに案内された。
「畳は全部張り替えたで新品だでねぇ~」ってゆーか玄関のドアの新聞受けただの四角い穴だし、みたいな。こっから明らかに中のぞけるし、みたいな。そして南側には庭付きのようだがその一角に物置のような小屋が建っている。しかしよく見ると屋根には煙突が‥‥。風呂だった。外かよ、みたいな。異様に主張する木の桶が小屋の中に置かれていた。風流だねぇ~ってそうじゃないんだ。
引っ越しを手伝いについてきてくれた先輩達は、面白がってその風呂桶の中にまたいで入ってみたりなどして遊んでいたが、そのうちに大変なことが発覚した。試しに水を張ってみたら、しばらく使用していなかったためか木が縮んでいて水がすべて漏れ出てしまうのであった。これがこの松川の風呂。