2006.03.23
ブレたとき
仕事が一段落して茫然としていた。2週間近くテレビ欄だけ見て、開きもしなかった新聞をひと通りめくって済んだことにする。この2週間で頭ん中がだいぶブレてしまったから、待機中の今日は立ち止まってみようと思う。坂口安吾の『青鬼の褌を洗う女』を読むことにする。安吾の『青鬼の褌を洗う女』は神聖なものだから、寝る前のモーローとした状態でいいかげんに読むのではなく、椅子に腰掛けて姿勢を正して読みたいと思う。安吾は全てを突き放す冷酷さと全てを受け止める温かさがあるけれども、結局は温かい。あるがままだよと言ってくれる。同じ本を繰り返し読むということをほとんどしない私にとっては珍しく数回読んでいる。けれども最後に読んだのはおそらく10年近く前だし、細かいディティールなどほとんど憶えていなく意外と新鮮なところがお得だ。
よい映画を観終わったときのような温かいものに包まれる。何回読んでも。恋愛小説としても素敵すぎる。それにしてもこの温かい余韻を残す結びの部分。虎の皮の褌を洗う女と、調子外れの胴間声の青鬼。改めて、鬼は虎のパンツではなく、褌なんだなと装着された形状を確認してみたりする。映像化したら絶対に感動的には成り得ない画だと思うから、絶対に映画化とかしないで欲しいと思う。だがしかし、この結びの部分がもっとも素敵なワンシーンなのであるのだけれど。