閑人、温泉のはしご
二カ所の温泉の回数券を手に入れる任務があり、その二カ所の温泉に行く。温泉に一人で出かけて行くというのは相当なしばらくぶりである。
むかし一年間を温泉あるいは銭湯に毎日通うという生活をしていたことがあり、その時以来だと思う。
当時は温泉といえば洗い場が少ない上に近所の温泉愛好家に加えて観光客も入り混じり常に芋洗い状態で、洗い場の場所取りに皆の目がギラギラしており、温泉なのにリラックスもへったくれもなかった。どちらかというと利用者が生活の一部として集まる場としていかにも日常的な銭湯の方が好きであった、というよりも面白かった。いや今はそんな話ではない。一人で温泉に行くということだ。
最初に行ったところは小布施町にある小布施温泉穴観音の湯という温泉だが、平日の昼過ぎというマイナーな時間帯であるためかなんなのか、お客はちらほらで全く混んでいる様子はなかった。ここの温泉にはミストサウナがある。10年くらい前に一度来たことがあった。その時はこのサウナの、突然下から勢いよく吹き出してきた蒸気に狼狽して、出るタイミングがわからずのぼせてたいへんだった。今日はもういつ止まるとも知れない蒸気が突然出てきても慌てることはない。自分のペースで何回も繰り返し出入りしてやる。ミストのせいなのか熱さがあまり苦にならなく意外と長時間入っていられたような気がする。
他には露天風呂もあり、中腰になると柵越しに北信濃に連なる山々や周辺のリンゴ畑が見えて眺めが良好であった。まあいつまでも中腰でいるのは不自然なので、腰を下ろして空を見上げながらボケ~ッと気の済むまで入ったり‥‥。実に気ままだ。誰にも合わせなくていい。一人温泉。
その後もう一件の温泉にも入り、回数券入手の任務は無事完了した。そして近くまで行ったついでにまた実家に寄り、甥っ子見物。閑人。