野尻湖で泳ぐということ(その2)
今年の7月の終わりの休日。
いざ泳ぐ日が来たと水着を着てクマを連れて野尻湖に行った。
湖に近づくにつれ気温がどんどん下がり、湖に着いたら寒かった。
そうだここは避暑地なんだ。クマはとりあえず飛び込んだけれど、人間は泳ぐとかそういう気温ではなかった。
クマは濡れ鼠のようになって泳いだ。
実家に着いたら夕方でクマを洗ってあげる時間がなかった。
ごめんなさいごめんなさい。
野尻湖で泳ぎたくなるような勢いづくような暑さで仕事をしなくてよくて何の用事もない休日などなかなかやってこない。
そうこうしているうちにお盆が過ぎ、お盆が過ぎたら急に秋のように寒くなった。
夏が終わるのは本当に寂しい。寒さで着膨れて固まっているより、暑い家の中で限りなく薄着でダラダラしている方がよっぽどいい、というかむしろ好き。
野尻湖チャレンジ、やり残したくない一心で気持ちがとても焦っていた。
8月の終わり、また暑さが戻ってきて最後の日曜日、今日がラストチャンスだとまた水着を着てクマを連れて野尻湖に行った。
野尻湖はやっぱり微妙に寒かった。
泡も微妙に浮いていて勢いづかない。結局膝くらいのところまでしか入って行けなかった。
いくじなし!
クマはどうも投げた球を拾ってくることを遊びと思っていない。
球をくわえて戻ってはくるが返してくれない。なんとしても人間に取られまいと必死だ。
こちらは犬と遊ぶ気満々なので、返してもらってまた投げるというシステムにしたいが一向にそうならないので、クマが喜々として球をくわえて岸に戻ってきたところへ、もう一つの球を水面に投げ込む。
クマはくわえてきた球を置いて踵を返し、もの凄い瞬発力で新しい球に向かってザバーンッと水に入って行く。そのヘビーローテンション。
鬼だ。身勝手な人間の鬼の特訓だ。
クマは球を取られまいと、先の球をくわえたままでもう一つの球を取りに行き、二つを同時にくわえることにも成功したり、取ってきた球を草むらに隠したり、とにかく必死だ。
人間は無情にも隠された球を易々と見つけてきてはまた水に投げ込む。
鬼だ。
そうこうしているうちに、クマは遂に岸辺に突っ伏し、前足と顎で球を抱え込んで離さなくなった。そして球をよこせと無理矢理奪い取ろうとする夫に対し、キレぎみで「ウゥゥゥ」と唸って抵抗していた。
もらえると思って取ってくる同じ球を何度も取りに行くという果てしない理不尽な行動。意味のわからない人間の行動にほとほと嫌気がさしたという体であった。
そんなケチケチモードのスイッチが入ったクマとすったもんだやっているところに、偶然にも友人と野尻湖お仲間御一行がやってきて、湖からは友人の野尻湖フレンドのご婦人がシェパードとボートで衝撃的に登場し、健康的に日焼けした筋肉質で引き締まったビキニ姿が日本人離れしており、イカしたご婦人だった。
別のお友達は早速ザバーンと水に飛び込んでいた。
入ってるよ・・・そうだよあれだよ、北欧のバカンス。
来年はやる・・・と思った。
そしてケチケチモードにしちゃってクマごめん。
シャンプーできれいに洗って実家にお届けした。